2014.4.10 thu

トンネルの向こう側。

ここのところ毎日、
高木孝治さんの声に聞き耳を立てています。

高木さんは、
国産木材+自然素材+職人技術の家作り集団
森びとの会」で、山形・東北エリアを
受け持つ
工務店、「古民家ライフ」の若き社長さん。


私が惚れこんでいる「森びとの会」の人々の
6社6様のドラマチックなリアルストーリーを
お伝えする「森びと今昔ものがたり」の
次回の主役は高木さんなので、

その記事作りのために、
取材時の膨大なインタビュー音源を
毎日くり返し聞いているのです。

私のライター仕事のほとんどは取材ありきで、
実際に現場に足を運び、そこでくらす人々への
インタビューをもとに記事を書くのですが、

その時の録音を聴き込めば聴き込むほど、
語られている言葉からだけではなく、
その人の声そのものから立ちのぼってくる
想いが胸の中に流れ込んできて、
その方が言わんとしていることの核心と
ひとつになってゆける気がします。

もちろん、録音を聴くことで、
インタビュー当日のその場の空気や、
目の前にいたその方の表情なども
リアルに思い出すことができるのですが、
現場では心に留まっていなかった事柄に
あらためて気づくことも多いのが、
聴き込み作業の醍醐味のひとつ。

昔は今のように、後から何度も録音を聴く、
ということはせず、現場でのメモと記憶をもとに
相手の方と面と向かっていた時に感じた
自分の感動ポイントを中心に記事を書く、
というやり方をしていたのですが、

ある時から
録音を聴き込むスタイルに変えたら、
記事の深みが増し、自分の中にも
新しく奥深い気づきが広がりました。

聴き込む作業は時間もかかるし、
外の世界と切り離された集中状態が続くので
かなりモンモンとするし消耗もするのですが、
聴き重ねて
その人の核心と一つになれた時、
胸の中でパーッとはじけるように花が開き、
筆が一気にイキイキと進むのです。

その喜びと気持ちよさは
何ものにも代え難いものがあり、だから私は、
モンモンとするトンネルを通らなくてはならない
とわかっていても、前を向いてその入口に
立つことができるのだと思います。


その人の人となりがすんなり心に入ってくる
インタビュー記事
というのは、
その人が言った言葉を
一言一句
そのまま書いたものではないのだ、
ということを、
私は自分がインタビュー記事を書くようになって、
初めて知りました。

インタビュー時に現場で感じた感動と、
あとからその録音を聴き込んで確かめた確信を、
自分の中に入ったその人の核心に向かって
言葉にしてゆく
作業は、

依頼主の想いに自分の感覚や経験を合わせて
設計図を描き、それに沿って材を集め、
集めた材に様々な刻みを入れ、
柱を組み、屋根をのせ、壁を塗って、
手をかけて
家を築いてゆく高木さんの仕事と、
似ているかもしれません。

…なーんて言ったら、
高木さんはどんな顔するかな(笑)。


数日中に更新予定の、
高木さんの今昔ものがたり。


現在公開中の直井さんの今昔ものがたり同様、
読み応えたっぷりな仕上がりになると
思いますので、
どうぞお楽しみに。


それにしても
森びとの会のみなさんの取材記事を書くたびに、
引っ越したくてたまらなくなってしまう…

あぁ〜困った…
どーしよー! (>_<)




2014年4月10日・木曜日