森びとの会とは

はじまりは工務店4社の出会いでした。顔の見える山の木と安全な素材で、手仕事を生かした家づくりを行う姿勢が驚くほど似ていました。1社では不可能なことも、仲間が集まればできます。正会員である工務店とサポート会員が協力し、山を守る活動や自然素材の性能評価などさまざまな活動を行っています。

家づくりには、罪づくりになりかねない
怖さがあります

森びとの会を立ち上げた工務店の経歴はさまざまです。森を育てる山林部門を持つ材木店から独立した会社、大手不動産会社を辞めた社長が起業した会社……。全員が最初から志の高い家づくりを目指していたわけではありません。

それぞれが家づくりの仕事をしている間に気が付いたのです。家が人の健康を害する凶器になりかねないことを。

ある会員は、せっかくマイホームを建てたというのに、子どもたちのアレルギー症状が悪化してしまいました。別の会員は、化学物質過敏症の建主さんのために一所懸命つくった家を、住めないと拒否されてしまいました。

合板や接着剤、塗料、材木の防腐・防蟻処理などから揮発する、有害な化学物質のせいでした。人里離れた山の中に隠れ住むようにして、化学物質の害から逃れている人の家を建てた会員もいます。

化学物質過敏症やシックハウス症候群のように、家が原因で苦しんでいる人がいることを知ったら、そこから目をそらすことはできなくなりました。知らん振りを決め込んだとしたら、家のつくり手である私たちが加害者になるのですから。

また、有害な物質が影響を与えるのは人間だけではありません。人の健康によくない物質は、虫にも魚にも鳥にも悪影響を与えます。自然界で分解できない物質は、いつまでも地球を汚し続けるのです。

こうした害から身を守るには、人間が自然の一部であることを再認識し、自然との共生を図ることが大事です。木や土といった、自然に分解される素材を使って家をつくり、化学物質を極力排したシンプルな暮らしを心がけることが基本となります。

会の設立メンバーである4社は、数年前からお互いを知っており、家をつくることの責任の重さを実感していました。そして、自分たちにできる最善を求めて、建主さんと一緒に暮らし方から考える家づくりをしたいと考えてきました。そのためには、1社で活動するよりも工務店が協力する必要があると考え、「森びとの会」を結成したのです。

「森びとの会」という名前の意味

私たち人間は、いうまでもなく自然の一部です。お母さんの胎内という自然環境から生まれ、空気や水、食料といった自然の恵みを享受して生き、やがて自然界の物質に還って行きます。この生命の循環を壊さないように、家づくりからできることを私達は目指しています。「森からうまれ、森へかえる」というキャッチフレーズには、そんな意味が込められているのです。

そして、日本の山を守りたいという気持ちも強く持っています。木材という森の恵みをたくさん使わせていただいている工務店として、山への恩返しをしたい。その思いが高じて、自分達で山の管理もするようになりました。


今の時代の“あたり前”=安全な家なのでしょうか

合板や、ビニールクロスに代表される塩化ビニール製品は、今の家づくりであたり前のように使われています。合板を釘で留める壁は強度が高く、施工も早くできます。塩化ビニール製品は安価で、施工直後は見栄えもよく、本物の木や紙のように見えるものもあります。便利な材料ですが、私たちは早い時期に使うのを止めました。合板の接着剤や、塩ビに含まれる可塑剤などの添加物の安全性に問題があると考えたからです。

F☆☆☆☆(フォースター)という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。2003年、シックハウス対応を目的とした建築基準法の改正によって、建材に含まれるホルムアルデヒドとクロルピリホスの2物質を放散する建材の使用が制限されるようになりました。ホルムアルデヒドは主に接着剤や塗料に、クロルピリホスはシロアリ駆除剤に含まれていた化合物です。

この法改正を受け、ホルムアルデヒドの放散量による建材の区分が義務付けられるようになりました。一般に、「フォースター」と言われる製品は、ホルムアルデヒドの放散量が極めて微量なため使用制限はありません。でも、ここに落とし穴があります。

有害性が疑われる化学物質は100種類を超えます。厚生労働省が室内汚染濃度の指針値を差発表している物質だけでも下の表のような13種類があるのです。

厚生労働省が濃度指針値を定めた13物質

化学物質 指針値 主な用途
1. ホルムアルデヒド 0.08ppm 合板,壁紙用接着剤等
2. アセトアルデヒド 0.03ppm 接着剤,防腐剤
3. トルエン 0.07ppm 内装材等の施工用接着剤,塗料材
4. キシレン 0.20ppm 内装材等の施工用接着剤,塗料材
5. エチルベンゼン 0.88ppm 内装材等の施工用接着剤,塗料材
6. スチレン 0.05ppm ポリスチレン樹脂等を使用した断熱材等
7. パラジクロロベンゼン 0.04ppm 衣類の防腐剤,トイレの芳香剤等
8. テトラデカン 0.04ppm 灯油,塗料等の溶剤
9. クロルピリホス 0.07ppb
小児の場合0.007
しろあり駆除剤
10. フェノブカルブ 3.8ppb しろあり駆除剤
11. ダイアジノン 0.02ppb 殺虫剤
12. フタル酸ジ-n-ブチル 0.02ppm 塗料,接着剤等の可塑剤
13. フタル酸ジ-2-エチルヘキシル 7.6ppb 塗料,床材等の可塑剤

※25℃の場合  ppm:100万分の1の濃度,ppb:10億分の1の濃度

 

つまり、「法律をクリアしさえすればいい」、「建材メーカーが安全だと言うから」と、自分たちで考えたり調べたりすることを放棄して建材を選ぶ姿勢は、ザルの目から水が落ちるようなものなのです。
私たちは、自分自身で安全性を確かめることを鉄則としてきました。自然素材の産地に足を運んで生産過程を確認したり、メーカーにMSDS(化学物質等安全データシート)を要求したりして、有害性が少しでも疑われるものは排除しています。

そうして使うことを決めた素材・建材の仕様が [ こちら ] です。

でも、まだ絶対とは言い切れません。たとえば、アルミサッシは気密性や防火の面で優れた窓です。しかし、そこに使用されている材料から微量の化学物質が放出されます。ユニットバスには塩ビが使われています。

私たちがつくるのは、普通の人の収入で建てられる家です。お金をかければ何でもできるというのではなく、安全性と性能、コストを考慮しながら、よりよい選択をしていきたいと考えています。

そのためには、工務店が協力して情報交換や共同研究をしていく必要があるのです。

嘘をついたら即刻退場
それが、私たちの家づくりのルールです

近年は、食の世界でも建築の世界でも、「偽装」が大きな問題になっています。一般ユーザーから見えないところで、プロがごまかしをするなんて、あってはならないことです。家づくりの世界ではどうでしょう。

残念ながら、世の中には、私たちから見ると「偽装」に近い行為がはびこっています。たとえば、仕上げ材だけに自然素材を使った「自然素材の家」。一皮むけば、合板の下地で、その下に隠れた木材が集成材だったりします。

 

私たちの家づくりは、見えないところこそ本物を使うことを徹底しています。すべての素材・材料を公開し、そのメリット・デメリットもお伝えします。

もし、ごまかしをする会員がいたら、即刻除名です。森びとの会は、単なる仲良しグループではありません。安全性を徹底して追及する家づくりをしてきた会員同士、時には最高に厳しい監査役になります。