木の家に住みたいという想いはあっても、土地を取得するところからとなると、利便性の高い都市ではかなりお金がかかります。それでも「新築する予算はないけれど、子育ては木の空間でしたい」という方にとって選択肢のひとつとしておススメなのが、中古マンションのリノベーションです。マンションは構造自体は木ではありませんが、表面の床、壁などに無垢の木を使うだけで、空気の質や五感で感じるものは、格段に変わります。
これは、三面開口のリビングがあるマンションのリノベーションの事例です。中古物件選びから同行させていただき、間取り変更が特に必要なく、内装工事だけで希望を実現できそうな物件に出会いました。目や肌に触れる部分を無垢の杉板とほたて漆喰の天然住宅仕様仕上げにするだけで、雰囲気も空気感もがらりと変わりました。都会にいながらにして、森林浴をしているようです。
テラコッタ風のタイルの玄関をあがったところから全面的にスギの無垢板の床に。無垢の木は表面が多孔質で吸放湿性があり、そのおかげで家の空気は湿度の高い時でもさらりと、乾燥する時期にはしっとりとします。正面のシューズインクローゼットにも、無垢材の扉をつけました。
明るいリビングダイニングへと、視界が広がっていく廊下。建て主様曰く一番お気に入りの場所だそう。既存の壁にほたて漆喰を塗り、それぞれの個室の扉も無垢材にしました。
三面窓のリビング。両側が壁になる住戸より断熱性は低くなりますが、太陽の陽射しのダイレクトゲインが大きいのが魅力です。
リビング正面の窓側から見たところ。天井の無垢の板の色とほたて漆喰の壁の白とのコントラストが美しいのです。台所の目隠しにもなっているカウンターには、グリーンの布クロスを貼りました。
台所では、部分的にタイルを貼ったのと、無垢の木の吊り戸棚をつけたくらい。設備周りをいじらなかったので、コストを抑えることができました。
台所収納が少ない分、すぐ脇に物入れの戸棚をつくりつけました。上部の棚は飾り棚としておしゃれに使っていただいています。廊下との境には、すりガラスのドアを入れました。これ一枚で、廊下からの冷気が止まります。
子ども部屋。スギ板は表面がやわらかく、寝っ転がっても気持ちいいのです。右手は、ふすまのついた押入れだったのを、ロールスクリーンで仕切った収納にしました。
ご夫妻の寝室。
大きな鏡とタイルで仕上げた洗面台。台下の収納は戸棚ではなく引き出しにしました。真ん中はキャスターのついた洗濯物なげこみ袋です。
トイレ。洗面台下の戸棚の取っ手は、革製。トイレットペーパーホルダーは桜の木製です。