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2014年01月14日

木になる話Ⅱ オノオレカンバ

前回は針葉樹でしたが、今回は広葉樹の中から以前エコ花のブログで取り上げたところ根強く検索ワードで上位を走りましたのでこちらでも・・・・・
オノオレカンバ(斧折れ樺)は文字通り、斧が折れるほど堅いことからこの名がつきました。大日本有用樹木効用編には「此樹ヲ伐ルトキハ斧ノ折ルルコト多キヲ以テ斧ヲレト云フ」、そして「日光、木曽、秩父、甲斐、岩代等ニ多シ」と記されています。
ほかの木材に比べて桁違いに堅いため、福島県南会津のオグラさんで丸太製材をお願いしたところ刃を何度も取替えてゆっくりと時間をかけて挽きました。堅いのですぐに切れなくなってしまうそうです。生えているのは、足場を確保しないと伐倒できないような山地の岩場が多く、ほかの樹木の生育にはあまり好ましくないようです。

オノオレカンバは比重が0.9~0.94で日本一重い木です。トチやニレの倍以上、ネズコと比

べると約3倍もの重量があります。木と一口に言っても、杉などのように爪でも跡がつくやわらかくて軽い木から、斧が折れるほど堅い木までさまざま。日本の気候風土の多様性を感じさせます。
じっくりと根を張り長い歳月をかけて成長するので、あまり大きくはならず、樹齢300年を越えてもやっと直径40cmほど。それ以上大きくなると徐々に腐れが入り、多くは空洞木となります。せいぜい高さ15m、直径60cmが限度で、それを超えるものはめったにありません。陽光を好む陽樹で、枝は周囲に大きく張り出します。根もよく張り保水力があるので、山を守ります。
重くて堅いオノオレカンバ、その質感は硬質でひんやりとした重厚さがあり、たたくと澄んだよい音を立てます。大半は岩場や急勾配の尾根など足場の悪い場所に生えているので、素直な木はめったにありませんが、素性のよい木は木琴の材料として最高だとか。また櫛の材料としてもツゲ同様長い歴史を持っています。木曽薮原の「お六櫛」の材料はオノオレカンバ。静電気がおきず、髪や地肌にとてもよいといいます。

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台所家具の扉でオノオレカンバを使用。木目が細かく艶やかな木肌でしあがった(天板はサクラ、床はクリ、天井は杉)

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また増改築の現場でオノオレカンバを大黒柱に使用しました。どっしりとした重厚感あふれる柱は、客殿の要として威風堂々とした趣をただよわせていました。(式台はイチョウ)

PS.ここのところ東京の冷え込みも厳しく、薪ストーブで過ごしている我が家では広葉樹の薪は宝石のように大事につかいます。昨晩はずしんとくるオノオレカンバの木端をストーブに入れたところトロトロと揺らめく炎を長時間出し続けていました。やはり針葉樹とは格段に違います。

エコ花直井