木になる話 Ⅵ キハダ
キハダはみかん科の広葉樹で、北は北海道、南は九州まで広く分布し、しばしばクルミや栃などほかの広葉樹と混生しています。大日本有用樹木効用編によると「富士山及ビ北海道ニ多シ」と記されています。陽光の差し込むで湿った土地を好み、大きなものは直径1m、高さ25mにもなるといわれますが、今日ではそれほどの大木はほとんど見かけません。薬や染料などの原料として古くから有用樹木だったことから、随分伐採されたものと思われます。
キハダは木肌、木膚と書くほか黄木、黄檗、黄柏なども同義語で、いずれも黄の字がつきます。これはキハダの内皮が鮮やかな黄色をしているためです。コルク層の樹皮を剥ぐとハッとするような山吹色の美しい内皮が表れます。白太(辺材)は薄黄色、赤身(心材)は黄褐色とはっきり区別でき、材は堅くて軽く、上品な光沢のある和風の繊細な趣が特徴です。
乾燥時に狂いが出やすく、小・中径材だと暴れやすいという傾向をもっていますが、目のつんだ大径木になると狂いはほとんど出ません。また栗の次に水に強く、土台や基礎パッキン、台所の床板などの建材として使われるほか、北海道では枕木にも使用されていました。黄、グリーン、茶、黒と色相が多いのはキハダならでは。独特の材質感と美しい木目が、和室や和風の落ち着いた雰囲気にぴったり。
キハダは家具材や建材として使用されるだけではありません。その黄色い内皮は苦味の強い成分を含んでいて、古来胃腸薬として、また二日酔いの特効薬として重宝がられてきました。特に有名なのが、奈良県の吉野や和歌山県の高野山などの名産、陀羅尼助(だらにすけ)です。
これ↓
エコ花でも数名愛用者がいるほど、有名で効き目があるらしい?!薬です。2つの層に分かれている樹皮の、外側のコルク層を取り去って内側の黄色の肉皮を乾燥させたものをオウバクと言います。この内皮を煮詰めてつくるこの薬は、歴史は古く奈良時代にまでさかのぼり、健康整腸剤として真言密教系の修行者たちの常備薬だったといわれています。
エコ花直井